「けいおん!!」ボーカリストとしての唯の成長がどう描かれたか。

もう少し、けいおん!!20話について。超記憶術ブログ@K-ON!!さんのこの記事が素晴らしくて。

 律「唯は見た目のまんまで、のんびりしてすっとぼけてるけど」
 紬「いつも全力で、一生懸命で」
 澪「周りのみんなにもエネルギーをくれて」
 梓「とっても頼れる先輩です」

この台詞はいつもの唯のことを言っているのと同時に、この回の唯のことを言っている。ともすればダウナーになりそうな他の4人のテンションを支えていたのが、唯のパワーだった
「今、唯は悲しみをすっとぼけて、全力で一生懸命に、周りにパワーを与えている。だから頼れる先輩」
そういう意味の台詞だったわけですね

(ぐだぐだMCは取りあえず置いて)あのライブでの「唯のパワー」は、そのステージングに表れていたと思う。が、ライブを引っ張るパフォーマーとしての力は、ラストライブで突然目覚めたわけではない。順を追ってポイントを見ていく。

  • 1期6話「学園祭!」:練習で声が嗄れたため、ギタリストとしてのステージ。
  • 1期8話「新歓!」:ボーカリストとしては初ステージ。ギターに集中して歌が飛んでしまったが、MCでの落ち着きに天性のフロントマンとしての資質がみえる。1期8話についてはさらに後述。
  • 1期12話「軽音!」:歌の最中には指板をほとんど見ない、自信あふれる演奏。突発的なムギのリプライズの入りに「もう1回!」のかけ声を入れられる反応のよさ。
  • 1期番外編「ライブハウス!」:初めての外部でのライブ。知らない客の前で堂々としたパフォーマンスができたことも重要だが、おそらく対バンのライブ=自分たち以外のライブを観るのも初めてではないか?
  • 2期1話「高3!」アバンタイトルウインドミル奏法*1。新歓ライブに向け、ステージパフォーマンスの意識の芽生え。おそらく1期番外編で、他のアマチュアバンドのステージから影響を受けた可能性。
  • 2期9話「期末試験!」:演芸大会のゆいあず。客層にあわせた選曲とアレンジ。観客を喜ばせるということに自覚的になった。
  • 2期10話「先生!」DEATH DEVILの結婚式ライブ。さわ子先生に「本物」を見せつけられる。
  • 2期12話「夏フェス!」:フェスに出場できるレベルの、一線級で活躍するバンドのライブを体験。演奏側と観客とのコミュニケーションを体験し、10話のさわ子先生と合わせてステージングを吸収。

天性の資質はもちろんあったが、ステップを追って成長が描かれてきたといっていいんじゃないだろうか。

ステージにおけるボーカリストの視線。

けいおん!」シリーズではボーカリストの「視線」に意味を持たせている。1期8話に顕著なのだが、唯の歌が飛んでしまったので慌ててボーカルに入った澪。

歌い始めたはいいものの、完全に視線が泳いでいる。1期12話では、唯が戻ってくるまで必死で前を見て歌う澪なんだけど(これは澪の成長)、その視線は遠くを見ているように感じられる。これは唯も共通で、前を見てはいるけれど、客一人ひとりと向き合ってはいない印象。


2期20話の唯は、最前列にクラスメイトがいたせいもあるけれど、客席の全部を見ている。憂の「目が合ったよ!」は単に姉萌えネタとして入れたのではないのだ。象徴的なのはこのカットか。客席を見渡し、澪にまで視線を送るこの余裕。

観客と向き合わずに、あのライブの「成功」はない。唯がどれだけ成長したかは、たぶん同じボーカリストでもある澪がいちばん(身をもって)知っている。

*1:律からThe WhoのDVDでも借りたか?