「けいおん!」の日常動作アニメートについて。

まっつねさんと法華狼さんのやりとりが興味深かったので、便乗して少し書いてみる。

まっつねさんは、純粋な作画の部分にフォーカスして、法華狼さんはコンテ段階を中心に論じていると受け取った。それで思い出したのが、WEBアニメスタイルでの千羽由利子の話。

 『ToHeart』は特に日常描写が多くて、単に座るとか立つとかいう演技でも、立っているのと座っているのの2枚しか原画を描いてこない人と、中に1枚何か入れて、芝居を入れる人とがいますよね。そういう時、「あなたは、この立つという事について、何か考えなかったの?」っていう風によく、新人の子には言ってたんで……。単に座ればいいっていうカットもあるし、座り方に芝居が必要な場合もあるし。

けいおん!」シリーズの特異な点は、「単に座ればいい」はずのカットさえも動きを描きこんでいったところじゃないかと思う。1期1話のムギで見てみる。*1

テーブルにトレイを置いた後、スカートに右手をやりながら座り、トレイを右手で中央に引き寄せる。このカット、コンテの指示では「トレー置きつつ台詞」「おじょう様の習慣でソファ席へ」としか書かれていない。(演出の指示があったかもしれないが)半ば無意識で行われる動きを加えたのは原画マンだ。ストーリー上は必要がなくても、「けいおん!」という作品全体には必要だったのだろう。山田尚子の考えるリアリティや女の子の可愛らしさはそこにあったのだろうし、こういった何気ない仕草を書き込むことが原画マンの間でもモチベーションになっていたんじゃないかと予想する。「うつのみやショック」と同じように。

おまけ。

音楽好き兼作画好き(オタってほど詳しくないんで)として、いちばん好きなのが1期12話のこのカット。重心がアンバランスなギターケースを背負う動作、前を開けた制服がギターケースに引っ張られる感じ(たいてい表面がザラザラしたナイロンだ)、よっこらしょっと背負いなおして背中の制服のヨレを取ってから走り出す。リアルなんだけど、ロトスコーピング的ではないデフォルメの効いた気持ちいい動きだと思う。

*1:どうでもいいけど、このころはみんな制服に余裕があるな。原作もアニメも3年生ではきつそうだったのに。