「異国迷路のクロワーゼ」1話を観た。
佐藤順一音響監督の下での悠木碧を楽しみにしていた「異国迷路のクロワーゼ」を観た(原作は未読)。残念ながら1話では悠木さんの出番はなかったのだけれど、予想以上におもしろかった。感想をTwitterでつぶやいてたので補足しながらここにまとめておく。
あ、今思えば「ジャポニスム」より「ジャポネズリー」のほうが正確かも。
Twitterの#yuneを見たら、言葉(日本語かフランス語か、通じてるのか通じていないのか)の部分で疑問を感じている方もいらっしゃるようだった。あとクロードの態度が急に変わったところ。
会話については「実はほとんど通じてました」というオチなので、たしかに混乱はあったけれど最後まで観れば混乱自体を楽しむことができた。なぜ湯音がフランス語を話せるのか?という部分は、時代背景として「ないとは言い切れない」レベルだと思うし、むしろ魅力的なエピソードに仕立てることができると思う。
クロードの態度の変化は実は「巧いなあ」と思ったところ。このころのフランスは「自由・平等・博愛」のはずが植民地政策を推し進めていたわけで。いきなり湯音を連れてきた父の行動に搾取を感じて態度を硬化させるのも、少年らしい正義感の表れとして好ましく思った。その後の、自分の態度を恥じるところも。
難しく考えずに楽しめる作品だとは思うけれど、よく考えてみても時代背景をうまく生かしている作品だと思った。
というわけで、はやくアリス出ないかなー。
「フラクタル」を観た。
ほめている人をあまり見かけないので書く。おもしろかった。冬アニメはまどか☆マギカもメリーも放浪息子もISも兄好もおもしろかったけど、なんだかんだでいちばん印象に残っているのはフラクタルかもしれない。
なにがそんなによかったかというと、中途半端を最後まで貫いたところ。最終話の「どっちかを選べっていわれても 今のおれには無理だ」というクレインのセリフ。「君とネッサを失ったら…おれ、悲しい」と言いながら、ただ二人を見送るだけという決断。スンダが命を賭して守った決断がこれ。そしてフラクタルシステムは再起動する。この結末は本当に衝撃だった。
フリュネ(とネッサ)との新しい人生を期待させるラストにしても、「戦いの結果フラクタルシステムは止められなかったがフリュネと思いが通じた」というわかりやすいストーリーには回収させてくれない。「出会ったときからずっと好きだった」考えようによっては今までの話はなくてもいいじゃないか。これはいったいなんなんだ?
なんとなく思ったのは、現実には起こりうるがフィクションでは現実「感」がないから避けられてしまう部分に踏み込んだのではないかということ。3話の星祭り襲撃の軽さも、ブッチャーの死のあっけなさも、スンダの無駄死にも、ロストミレニアム勢のグダグダっぷりも、物語から浮いてしまうことによって生まれる妙なリアリティを感じる。アニメを観ていて「うまいなあ」「よくできてるなあ」とか「あの伏線がこんなところで!」といった楽しさもあるけれど、同時に段取り臭とか物語のコマとしてキャラクターが操作されていると感じることもあった。「フラクタル」のキャラクターには、物語の中に放り込まれて右往左往している人間臭さがあった。自分が好きなところはそういうところ。
他にも印象に残ったところはたくさんあるので、思いついたことを箇条書きで。
- 放送開始後しばらくして、クレインがスープを飲むシーンで「身体性」が話題になっていたと思う。山本寛コンテの1話、クレインの自転車が坂道にさしかかるカット(身体性を強調するには最適だ)をさらっと流したのを観て、身体性なるものを全面に押し出す気はないんだろうな、と思ったり。そもそも「触れること」が最も強調されてたのってネッサだし。アニメで身体を表現するアンビバレンツをそのまま出してたように思う。
- カットの切り換えがゆったりしたテンポで、おそらくアニメを見慣れていない視聴者にも観やすかったのではないかと想像。ゆったりした画面を支える丁寧に動作を追った作画や美術もよかった。
- 特に走るシーンの作画はシリーズを通して力を入れてると思った(自分が気に入ったところは赤井俊文さんがやってそうな気がするけど定かではない)。千葉崇明、久保田誓、りょーちも、梅津泰臣、宮沢康紀、近岡直、鹿間貴浩…作オタの皆さんが好きそうなアニメーターさんいっぱい参加してるんだけどなあ。
- よくジブリといわれるけれど、むしろ関修一さんがキャラクターデザインをしていたころの日本アニメーションな印象。色彩設計のせいだろうか。
- 1話のフリュネで「この声でナウシカ演ってほしい!」と思っていたら、モーランが島本須美で納得した。小林ゆうも花澤香菜もよかったけど、津田美波が素晴らしかった。
- OP「ハリネズミ」フラクタルシステムを連想させるエレクトロに山本監督がこだわったケルト風のテイストが底流に流れる曲がよかったし、映像もエフェクトの切り換えやテロップのタイミングが心地よかった。子どもの頃に円谷の特撮作品のOPを観てどきどきしたのを思い出した。
- ED「Down By The Salley Gardens」岡田麿里作品を観ていてささくれだった気分になることが少なくないのだけれど、毎回この曲で心が洗い流される感じ。この曲をチョイスした山本監督を支持したい。原曲についてはWikipediaに詳細あり。
- OP/EDを一人のアーティストが担当するってやっぱりいい。
- 音楽を担当した鹿野草平さんが話題になるかと思ったらそうでもなかった。「もってけ!セーラーふく」にインスパイアされたというあの「吹奏楽のためのスケルツォ 第2番 ≪夏≫」を作った人ですよ!
なんかまとまらないけど、フラクタルを面白いといってる人間がここにいると主張しておきたかった。
「あの花」1話を観た。
BSなのでネットの高評価からだいぶ遅れた感じで「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の1話を観た。物語は始まったばかりだけれど、作り手の熱が伝わってくるのは確かなので、期待して観ようと思う。あと、ED「secret base 〜君がくれたもの〜」が話題をさらっていたように思うが、OP「青い栞」がとんでもなくよかった。
さて、めんまの「あなる」連呼にはさすがに吹いてしまったのだが、フロイトの「肛門期」(anal stage)を思い浮かべた。たぶん、少し反抗的なキャラクターから第一次反抗期≒肛門期を連想したのだと思う。
「ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪」を聴いた。
スイートプリキュア♪OP「ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪」の素晴らしさがあまり話題になっていない気がするので感想などをつらつらと(発売日の3月9日に買って、地震後かきそびれて今にいたる)。
今の本編は、音吉さんの謎、セイレーンの揺れ、キュアミューズの登場と物語にエンジンがかかってきた感があるけれど、当初はずいぶんのんびりした作りだなあと思っていた。特に前作のハートキャッチプリキュア!がハイテンションで駆け抜けたせいもある。OPも「Allright!ハートキャッチプリキュア!」に比べてゆったりして感じられた。テンポが遅いのかな?と思っていたらすでに調べている人がいた。さすがの古代祐三さん。
BPMが15違えばかなりスローに感じられるはずだ。四分音符中心でシンコペーションの殆どないメロディーラインもゆったり(ハートキャッチの縦ノリは強烈だった)。ここまで明確に曲を変えてきたということは、本編の気分がOPにも反映されているのかな、と思う。というわけで、本編もリラックスして楽しんでいるところ。
シリーズ過去作OP曲から明確に変えてきたことがもう一つ。今回、OP曲としては初の完全なバンドサウンドだ。前作までのOP曲は、70年代あたりのアイドル歌謡やアニソンの流れを引き継いだもので、ホーンやストリングスがアレンジ上の重要な位置を占めてきた*1。スイートOPはキーボードさえ装飾的に一部使われているだけ。「ギターロック」と言っていい。
「ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪」のチームは作詞:六ツ見純代、作曲:marhy、編曲:久保田光太郎、歌:工藤真由。ハートキャッチED1「ハートキャッチ☆パラダイス」と同じチームだ。イントロのギターリフが印象的だった。marhy+久保田光太郎ならプリキュア5 ED1「キラキラしちゃって My True Love!」(これすごい好き)。スカ〜スカコア調の、これもロック色が強い曲。アレンジャーの久保田さんがキーだなと思って調べてみると、エレファントカシマシやキャプテンストライダムのプロデュースなども手がけている模様。さらに久保田さんがやっていた「SUPER TRAPP」の曲をYouTubeで探してみたら…
なにこれかっこいい。センスとテクニックを両立したギタリストじゃないか。「ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪」イントロど頭のギターの音のよさが衝撃だったのだけれど、なるほどなあという感じ。アニソンのギターの音作りといえば、ヘビーなディストーションかクリーントーンかの両極端の印象があるが、「ラ♪ラ♪ラ♪」は歪み量のコントロールが繊細で。右chと左chの音色とフレーズの絡み、ギタリストには本気でおすすめしたい曲なので、ぜひFull ver.を聴いてほしいと思う*2。特にストーンズを知っている人はギターソロのバッキングで爆笑できるはず。
さらに、リズムセクションもかっこいいと思っていたらとんでもないメンバーだった。
id:tunderealrovskiさんの記事で、プリキュア関連の楽曲を多数手がけている高取ヒデアキさんの弟さんが元COALTAR OF THE DEEPERSのメンバーだったことが紹介されていた。「広義のオルタナ」ということになるけれど「ラ♪ラ♪ラ♪」のドラムは中畑大樹(元Syrup16g)、ベースは有江嘉典。つまりVOLA & THE ORIENTAL MACHINEのリズムセクションがプリキュアに!
プリキュアというメジャーな作品に、こういった最前線のロックミュージシャンが参加していることの痛快さは、木村カエラのバックバンドという形ではあれど、渡邊忍(ASPARAGUS)や柏倉隆史(toe/the HIATUS)らが紅白に出た、というのに近い。面白い時代になったなあと思います。
「魔法少女まどか☆マギカ」11・12話を観た。
Twitterとはてブとフィードリーダーをほぼ封印して予備情報なしで観た。ネタバレはそんなに気にしないけど、他の人の感想に影響されない状態で観たかったので。で、自分の感想をかんたんに。
おもしろかった。まどかの願いについては、悲劇を望まない最強の魔法少女という設定から「ファイブスター物語」のクローソーを思い浮かべていたので、悲しい運命を終わらせるための願いになるだろうとは思っていた。全てをなかったことにするのではなく、希望をもつことが間違いである世界を変えるという願いは、まどかの誠実さの表れとしてすごくよかったと思う。心を決めたあとのまどかの表情、声。蒼樹うめ+岸田隆宏のデザインと悠木碧の力を強く感じた。
描写が魔法少女の世界に寄っていて、普通の生活を失う怖さがあまり感じられないのが不満だったのだけれど*1、11話で個人的にはわりとOKになった。まどかの母と先生とのやりとりが嬉しかった。さやかが死んで、仲の良かったまどかを心配して母親をフォローする。いい先生です。あのシーンがあるからまどかをほむらの元へ送り出すことができたわけなんで、ワルプルギスの夜を止めたのも宇宙の法則をねじまげたのも先生のおかげ。それは冗談としても、周りの人たちを描いてくれたおかげで、まどかが見えてきたというのもある。
最後まで観て、感じたのはまどかと作り手の誠実さだったというのは自分でも意外だったなあ。
おまけ
- まどかマギカのクライマックスとほぼ同時期にキャラクターデザインの岸田隆宏がIS<インフィニット・ストラトス> 11話に参加してて吹いた。
- まどかで悠木碧をいいと思った人はGOSICK観たほうがいいと思いますよ。
「魔法少女まどか☆マギカ」10話を観た。
ここにきてやっと、素直に面白いと思った。今までは段取り臭が強くてキャラクターに魅力を感じることができず、いまひとつ乗れなかった。が、ここまで感情を殺してきたほむら、うろたえ怯えてばかりのまどかの心情にやっと触れられたような気がした。9話までのまどかを思い起こさせるループ初期から、今のほむらへの変化を見事に演じた斎藤千和が素晴らしかったし、悠木碧の演技はほむらに何度でも繰り返すことを決意させるだけの説得力があった。あそこのまどかの表情もすごくよかったし。画の力と演技の力と音楽と、脚本以外ももっと評価されるべきじゃなかろうか。
あと、ほむらの三つ編み。裏表を描き分けようとしていた。これはけっこう珍しいと思う。