「けいおん!!」20話を観た。

結論を先に書いておく。「グダグダな部分も含めた高校生バンドらしさ、観客の学内ライブらしい盛り上がりが最高によかった。ただ、演奏描写はもう少しがんばれたんじゃないの?」という感じ。

前回、OP2でボーカリスト・唯とギタリスト・梓の話を書いたわけだけれど、今回がそのターニング・ポイントになっていた。ギターから手を離した「ごはんはおかず」は唯が作詞した曲というのも重要なところ。澪の他のメンバーが作詞をはじめるエピソードは原作準拠で、こういうところはかきふらいは本当にうまいな、と思う。最近のバンドだと、チャットモンチーが「ボーカリストも詞は書けるが、他のメンバーが詞を書くことが多い」かな。澪の詞*1を認めつつ、唯の成長とバンドの表現の広がりを上手に表現している。

中学校ではあるが、教員をやっていたころに生徒の学祭ライブに関わった経験からみて、観客生徒の描写はほんとにリアル。3年生ならではの、無理やり盛り上がってしまえ感とか最上級生だから遠慮の必要ゼロ感とか。学園祭という非日常の中でも、とりわけ校内ライブは日常の学校生活からかけはなれた空間なんだと思う。そんな中で目を引くのがこのシーン。

Bパート冒頭、ライブ会場以外の校内の様子*2が描かれる。ライブでの盛り上がりは局所的なものであることの明示。そして扉越しに聴こえるくぐもった「ふわふわ時間」がフェードインし、会場入り口。クールなキャラクターの唯たちのクラスメイト(いちご)が放課後ティータイムTシャツを配っている。おそらく「自分は別にライブ観なくてもいいんだけど、いちおう協力はするから」ぐらいの距離感。他にも、純なんかは演奏中こそノリノリだが、MCの最中は苦笑いだったり。ライブで盛り上がるのが正義!という単純な表現はされていない。だから、20話の評価が割れて当然なのかもしれない。

演奏描写については、1期8話の新歓ライブや12話の学園祭ライブほど燃えなかった。2曲とも、入る前のアイコンタクトをこれでもかってくらい分かりやすく描いていたけれど、あれを1期12話のように演奏の中でやってくれれば「バンドらしさ」が出たんじゃないかと思う。2期で放送局が増えたせいか「途中から観はじめた人にもわかりやすい」演出に変わったのだろうと思う。それでも、こんなカットにはやはりぐっと来てしまう。

「ごはんはおかず」イントロで、唯のシールド(ケーブル)がひゅっと動く。一歩下がって弾いていた唯が、歌の入りでマイクに向かって踏み出す表現。「けいおん!」ならでは。

もう一つの不満は、ラスト曲は「U&I」でよかったのかということ。ライブでの新曲披露というのは、早く聴けたという喜びはあっても、知らない曲だから盛り上がるポイントを掴めなかったり、演奏がこなれていなくて微妙だったりということも多い。1期12話が感動的だったのは、「ふわふわ時間」という楽曲自体(演奏を含む)が成長したからというのも大きいと思っている。初めてのオリジナル曲で、2年間演奏してきた曲として扱ってもよかったんじゃないか。「U&I」をやらないわけにはいかないので、例えば「ふわふわ時間」演奏中に会場に入るシーンをもう少しだけ長く取って、会場全体でサビのコーラス大合唱してるとか。もうちょっとだけ、曲が大事にされてる感じが伝わってくればもっとよかった。なお、U&I」は劇中で唯一カウント無しで始まる曲だったことは特記しておきたい。

おまけ

今回、日笠陽子が少し鼻声っぽかったんだが、泣き出す前の澪にすごい合っててよかったんだよなあ。

*1:「あいつが歌うから詞が書ける」「あいつが書いた詞だから感情を込めて歌える」という関係も好きだ。メジャーどころだとGLAY、自分の好きなバンドではBACK HORNがこんな発言をしていた。

*2:オカルト研がライブを観るため外出中になっているのが実によかった。